日本人が倒されると喝采が起きていた時代

倉田保昭さんの写真
(撮影◎本社 奥西義和)

『帰って来たドラゴン』で僕は、悪役としてブルース・リャンと戦うのですが、アクションシーンは僕と彼とで「ここでこうやって、それをこう受けて」「ちょっと下がって、攻撃して」と口頭で打ち合わせをするくらい。完全なるフリースタイルでしたが、あれはお互いに息がぴったり合っていたからこそできたことでした。

顔を殴るシーンでうっかり当たってしまったとしても、双方に技術があるのでケガをさせるようなことにはなりません。皮一枚残して少しかするくらいです。そんなことができたのは、今も昔も僕らだけだと思います。

また当時はまだ戦争の残り香があり、日本人が倒されるシーンがくると香港の映画館で喝采が起きていた時代です。監督をはじめとしたスタッフは、「日本人をどう倒すか」に強くこだわっていました。

こちらはもうフラフラでいつ倒れてもいい状態なのに、向こうのほうで「最後にどうトドメを刺そうか?」と話し合っているのですから、「ちょっと私情が入ってるんじゃないの!?」と疑ったこともありました。(笑)