倉田保昭の名を知らしめた香港映画『続・拳撃 悪客』

僕の香港デビュー作は、チャン・チェ監督のクンフー映画『続・拳撃 悪客』(1972年)です。主演は当時香港のトップスターだったティ・ロンとデビッド・チャン。監督はこの大スター2人の間に、僕を入れてくれたのです。おかげでたった1作で、僕の名前は香港中に知れ渡ることとなりました。

ちなみにこの映画の助監督は、後に監督として『男たちの挽歌』『ミッション:インポッシブル2』『レッドクリフ』等の大作を世に送り出したジョン・ウー。彼はカタコトの日本語を話すので、よく食堂で一緒にご飯を食べながらお喋りしていました。また、この作品でスタントマンをしていたユエン・ウーピンは、今やアクション監督としてハリウッドで名を馳せています。

僕は『男たちの挽歌』でトップスターとなったチョウ・ユンファとも仲がいいのですが、彼から「倉田さんが香港に来た時、僕はホテルのポーターをしていました」と言われたことがあります。家が貧しかったために最初はそうやって働いて、その後テレビ局の研修生になり、ドラマ、映画へと活動の場を広げていったんですね。

『続・拳撃 悪客』の2年後、日本で『帰って来たドラゴン』が上映されることになり、僕も宣伝のために一時帰国。配給会社の人に「この映画は君で売るからね!」と言われ、全国をキャンペーンして回りました。するとその半年後に日本からオファーがあり、19時半からの30分ドラマ『闘え!ドラゴン』がスタートしたのです。

久しぶりの日本の現場でしたが、香港の撮影に慣れていた自分にとって、時間や段取りが細かく決まっている日本のやり方は厳しくて。のんびりした香港が恋しくなって困りました。(笑)

倉田保昭さんと『帰って来たドラゴン』ポスターの写真
(撮影◎本社 奥西義和)

>>後編へつづく 

帰って来たドラゴン』は7月26日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

『帰って来たドラゴン』のポスター
(C)1974 Seasonal Film Corporation