(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)」によると、2023年の空き家数は過去最多の900万戸だったそう。そのようななか、小説家の高殿円さんは、祖父と叔父が亡くなってから長年放置されていた、築75年・再建築不可の実家に頭を悩ませました。高殿さんは、大量の残置物を片付けるために<ガレージセール>を実施することにしたそうで――。今回は、高殿さんの著書『私の実家が売れません!』より、一部抜粋・再編集してお届けします。

家族写真の意外な活用法

せどらー(=商品転売によって利益を得ている人)のFさんに話を聞いて一番驚いたのが、家族写真までも資源として活用することだった。

よく、仏壇の天井付近に亡くなったご先祖様の写真が飾ってあったりしませんでしたか? あれって気軽に写真が撮れるようになった時代から始まったことだと思うので、日本の伝統でもなんでもないと思うんだけどね。

とにかく、うちも例に漏れずご先祖写真があり、そして叔父が友達や家族と撮ったのであろう写真が、写真立てにおさまってあらゆるところに飾られてありました。

とくに高価な写真立てでもないからゴミだろうと思っていたら、アルバムごと引き取るという。

なんでも、戦争などで焼けた東南アジアの村や、もともと写真など撮る習慣のなかった場所から出てきて一代で財産を築いた人々が買っていくらしい。

「え、われわれが西洋アンティークだと思ってモノクロ写真を飾るみたいにですか?」

「いえいえ、そうじゃないんですよ。自分たちの先祖の写真代わりに飾るみたいです」

どういうことかピンとこず、つっこんで聞くと、つまりもと日本軍の占領下だった地域はとくに日本人の古い写真があっても違和感がないので、我が家は伝統ある家ですよ、あるいは家族が仲良しで、代々続いている家なんですよ、というアピールをするためのインテリアとして使われるのだそうだ。

「うちの叔父が? インドネシア富豪の父の役になったりするわけ?」

「まさかの写真が異世界転生」

「異世界じゃないけど、異国転生……」

まあ叔父はわりと濃い顔つきで、インドネシアでバリバリの石油マンやっていたと言っても違和感はない、かもしれない。

まあもう亡くなった人だし、置いておいても保管場所もないし、なにより、とくに愛着もないので、そのままインテリアとして輸出されることになるだろう。

なにかの捜査を攪乱させることなく、インテリアとしてよろしく活用してほしい。