キャスティングに参加
2020年2月、私はパリに到着した。
オファーがあったわけではないから、若い子たちにまじってキャスティングに参加するところからスタートした。
キャスティングとはオーディションのことを指す。
経験の少ないモデルたちは、キャスティング会場をいくつもまわって仕事を手にする。
私のキャリアでキャスティングを受ける人はほとんどいないが、10年ぶりなのだからしかたがない。
正直、めちゃくちゃ不安だった。
パリまでやってきて、何ひとつ受からなくて、ランウェイを歩かずに帰る可能性だってある。
「冨永愛、何しに来たんだ」って思われるかもしれない。
当時、「セブンルール」という番組の撮影クルーもパリに来ていて、私の挑戦を密着取材していた。
引くに引けない状況だった。
キャスティングに受からなければ、どんな番組になってしまうのか、全国に生き恥をさらすのかと、かなりのプレッシャーを感じていた。
それでも私が今後どう生きるかは、この勝負を経なくては決められない状況だった。