篠井さんのブランチは、2001年から3回演じられている。しかし実は92年に実現するはずだったのが、当時の戯曲著作権所有者からブランチを男性が演じることに難色を示され、上演中止を勧告された。
――そうなんですよ。上演権が取れて、もうお金も払ったのに、青山円形劇場で幕が開く1ヵ月前に、主役が男とわかって中止の通達が来ました。
僕たちも困り果てて、友人の弁護士に相談したら、裁判すれば多分勝てるけど、でも2年くらいかかると思うよ、って。
それで演出の盟友・鈴木勝秀くんが一週間で『欲望~』に似たようなテーマのオリジナル脚本を書いて、上演にこぎつけたんです。
僕はこの時から、メイクや衣装など見かけの女らしさを排除して、ほぼ生身に近い姿形で、舞台に立つようになりました。この8月に池袋で上演する『天守物語』もその線でまいります。
というわけで、第3の転機はやはり、2001年に『欲望~』をようやく上演できた時でしょうね。