念願の『欲望~』の上演にこぎつけるまでに、実に9年の歳月が費やされた!
――著作権を取ってくださるエージェントに毎年電話したり、手紙出したり、付け届けしたり(笑)。
そしたらある日、当時の事務所の女性が、「アメリカでテネシー・ウィリアムズの他の作品のヒロインを男性が演じる」という記事を見つけてくれて。それを持ってエージェントに飛んで行って交渉してもらって、許可が取れたわけなんです。
僕の最初のブランチを、文学座の公演で杉村さんの相手役のスタンリーを演じた北村和夫さんが青山円形劇場まで観に来てくださって、「いやぁ、杉村さんを思い出したよ」って。もう滂沱の涙ですよ。
その後、杉村さんのブランチがニューオリンズの街に登場する場面の写真パネルを「やるよ」って、僕にくださった。
杉村さんの素晴らしさは、外国の芝居だということを忘れさせる力があるところです。日本語が美しくて楽しい。あの台詞回しとか息遣いは、聞いててもうワクワクしますからね。
三演目の『欲望~』の時は、スタンリー役が北村さんのご子息・有起哉くんでした。本当に声がよく似てて、だから毎日が幸せでしたよ。まるで自分が杉村さんになったみたいで。夜な夜なカセットテープを聴いてたころの夢が叶ったみたいでしたから。