女性の役はなかなか回ってこないから
篠井さんの女方の大役は、ほかにも『リア王』のコーデリア、『サド侯爵夫人』のルネ、『ハムレット』のガートルードなど。
――『リア王』は鈴木忠志さんの演出で、リア王役がトム・ヒューイットでしたから、英語と日本語ごちゃまぜで。僕はコーデリア役で嬉しいんだけど、「女っぽくやらないでお能のように男でやれ」と言われて戸惑いました。
それから『サド』の演出はソフィー・ルカシェフスキーというフランス人の女性で、俳優は男6人でやらせていただきました。彼女はジャポニズムを入れたくて、ルネの登場シーンに花道を作らせたりしてましたね。
『ハムレット』のガートルードは、野村萬斎さんの主演の時。イギリス人の演出家だったけど、これも全部男優でした。
でもね、世の中には素敵な女優さんがいっぱいいらっしゃるから、なかなか僕に女性の役って回ってこないんですよ。なので、今度上演する『天守物語』のように、自主公演として、女主人公をバーンとやってみせるんです。
まぁ、歌舞伎の衣装や装置には敵わないから、いつの時代かどこの国かもわからないようにして、でも言葉は全部、尊敬する泉鏡花のままで。
僕がこうして自主公演を打つのは、「現代演劇で女方を生きる人間がここにいますよ」という、プレゼンテーションなんですよ。これだけはやっぱり、やり続けないと。
プレゼンテーションの結果として、今後やりたい役は?
――何でも好きな役をやらせてあげると言われたら、恥ずかしいんですけど、やっぱり『欲望~』のブランチなんですよ。
三つ子の魂百まで……しぶとく演じ抜いてくださいませね。