そうはいっても箪笥の肥やしになってしまうのもなぁ……と、夫の冬用のもこもこシャツを未練がましく触っていた時にひらめいたのです。これでクマさんのぬいぐるみを作ったら、可愛いのができるかもしれない。

翌日、さっそく『初めてのぬいぐるみ』という本を買い、制作に取りかかりました。作り方とにらめっこしてああでもない、こうでもないと格闘した末に、やっとの思いで誕生したクマちゃん! つぶらな瞳を見つめていると、今にも「あのね、ぼくちゃんね……」と話し始めそうです。

愛犬が天寿をまっとうしてすでに20年近く、その愛犬の瞳を思い出してしまいました。そんなひとり暮らしの心の隙間をクマちゃんは優しくほんわか温め、癒やしてくれたのです。

愛しのクマちゃんにも家族を作ってあげよう! さっそく夫の洋服を使って次の制作に取りかかることに。あっという間に父さん、母さん、兄さん、弟、妹を作ると、クマちゃん一家が勢ぞろい。「母ちゃーん、兄ちゃんが意地悪する!」「おまえ、何言ってんだ! ずるいぞ!」

そんな声が聞こえてきそうです。独居老人の家がにわかににぎやかになり、私のぬいぐるみ作りに火が付きました。