電子レンジで食育を

音羽の講談社に呼ばれて行くと、「『電子レンジで祥子流』を書いていますね。

だしを取ったり、お米を炊いたり、普通の家庭料理を電子レンジで作る。

男女雇用機会均等法の時代、個食化が進む今日、これは絶対に当たります。

石油の鉱脈を探し当てたようなものです」と、生活文化局長に言われました。

私はすっかり石油王になった気分。

すぐ執筆に取り掛かり、講談社から『電子レンジに夢中』を出版し、ベストセラーに。

その後もさまざまな出版社から電子レンジを使った料理本を上梓し、その数500冊を超えます。

「電子レンジで調理する」という考え方は、特殊なことではなくなりました。

子育てをしていた頃、私が台所にいると、「なに、作ってるの?」と、料理をする私の手元を見て、子どもたちはよく聞いていました。

「僕がサラダ作ってあげる」と、見よう見まねで野菜を洗い、塩を振って、酢と油をかけてお皿に盛りつけました。

まだ食育という言葉のなかった時代ですが、子どもと食について考えるきっかけとなったのがこの体験です。

※本稿は『料理家 村上祥子82歳、じぶん時間の楽しみ方』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。


料理家 村上祥子 82歳、じぶん時間の楽しみ方』(著:村上祥子/エクスナレッジ)

82歳村上祥子の「元気の秘密」と「人生を輝かせるレシピ」――

ずっと元気で、すこやかに。

仕事、プライベート、子育て、そしてこれからの夢。じぶんの時間を目いっぱい楽しんで過ごせば、きっとうまくいくはず。人生100年時代を謳歌するためにぜひ読んでおきたい痛快エッセイ!