(撮影=山下みどり)『料理家 村上祥子式 78歳のひとり暮らし』より
バナナ黒酢やたまねぎ氷、にんたまジャムなど、開発する健康食がたびたび人気を集めてきた村上祥子さん。健康に生きるため、「食べる」ことを第一に考えるキャリア50年の料理研究家は、家事にどう向き合っているのでしょうか。油も抑えられ、時短にもなる上手な「電子レンジの使い方」を教えてもらいました。(構成=村瀬素子 イラスト=星野イクミ 撮影=山下みどり『料理家 村上祥子式 78歳のひとり暮らし』より)

前回●村上祥子「子どもが巣立ち、暮らしをコンパクトに。洋服はオールシーズン30枚。衣替えや虫干しの手間もなし」

きっかけは糖尿病予防

私が時間に目配りしているのは、食事を摂ることを大事に考えたいからです。食べることより家事を優先したりはできません。どんなに忙しくても、1日3食、決まった時間にしっかり食べる。それが人間の生きる礎だと思っていますから。

生理学では、人間は1時間に約100kcalのエネルギーが必要、と言います。1日8時間睡眠で考えれば、1日あたり最低でも1600kcalを消費することになります。それを私たちは3食で補給しなければならないのです。

特に50代を過ぎると、筋肉をつくるタンパク質の摂取が欠かせません。不足すれば将来的に足腰が弱ってしまう危険性がありますので、一日70gのタンパク質を摂ることを、皆さんにはおすすめしています。

私は朝食は7時半、昼食は1〜1時半、夕食は夜の7~8時に摂ります。朝食は玄米ごはんに野菜たっぷりの味噌汁、納豆、チーズ、温泉玉子が定番。すべて電子レンジでつくりますので、時間はほとんどかかりませんし、これで摂取カロリーは500kcal程度。昼食の時間には本当にお腹がペコペコになります。

とはいえ、手間をかけた料理は歳をとるほどおっくうになるものです。私のように、一人暮らしであればなおさら。ならば手間をかけなくても、おいしくて必要な栄養がちゃんと摂れる調理法があればいいと思いませんか。そんな中高年の強い味方が、電子レンジなのです。

福岡女子大学で栄養指導実習を担当していた1985年。糖尿病予防と改善の食事が注目を集めていました。当時の治療食は「1日1200kcal」と、基礎代謝量1400kcalを切る厳しさでした。

肉、魚、野菜の摂取量を満たしつつカロリーを抑えるには、通常の調理器具ではおいしくできません。そんなとき、ひらめいたのが電子レンジを使うことだったのです。