WHO(世界保健機関)の推定では、うつ病患者は人口の約3%いるとされており、心を病む人の人数は年々増加の一途をたどっています。精神科医・心療内科医の数は増え、メンタルクリニックも増えているのに、メンタルを病む人がなかなか良くならない「本当の理由」とは何なのでしょうか?よりよい医療を受けるためのヒントを、精神科医 和田秀樹氏著書『「精神医療」崩壊 メンタルの不調が心療内科・精神科で良くならない理由』から一部を抜粋して紹介します。
増加の一途をたどる精神疾患の患者数
メンタルの不調を訴える人は、年々増加の一途をたどっています。
厚生労働省の最新の「患者調査」によると、2020年の段階で精神疾患を有する患者の総数は614・8万人と報告されています。
過去3年の間に急激に増えたように見えますが、2020年から統計の取り方が変わったためです。
しかし、年々メンタルを病む人が増えていること、そしてその総数が600万人を超えていることはまぎれもない事実です。
うつ病・躁うつ病と診断された人は約172万人で、24年前とくらべて4倍近く増加しています。
これだけでも驚きますが、WHO(世界保健機関)の推定では、うつ病患者は人口の約3%いるとされています。
したがって、数値に表れている受診中の患者は半分程度にすぎず、潜在患者を含めると(1億2000万人×3%で)300万人をゆうに超えると考えられます。
男女とも50代が最もうつ病・躁うつ病が多いのがわかります。
統合失調症の患者数は約88万人にのぼり、3年前の調査データとくらべて9万人増加しています。
しかも、統合失調症は一般的に人口の0・7%存在するといわれていますから、実際には100万人程度は存在すると推定されます。
不安やパニック発作、恐怖、強迫観念などの神経症性障害については、2017年の調査結果ですが、約83万人と報告されていて、15年間で1・9倍増えています。
子どもの発達障害も、この13年でおよそ10倍に増えました。