流石に恥ずかしかっただろうなという気持ちも理解できたので、娘にお金を渡すことに。

そして、「1万円渡すから買っておいで」「最近の水着って1万円で足りるんかな……?」「足りると思うねんけどわからんから2万円」というやりとりの後のこと。

疲れていて眠い娘と、お金を直接取りに来ないことに不満を抱いた私とのケンカが始まりました。

「もう眠いからテーブルに置いといてや」

「ちょっと!! 部屋に戻らんとここまで取りに来てよ!」

「今、疲れてるって言うてるやん! 置いといてよ!!」

部屋に引っ込もうとする娘の態度に、私はカチンときてヒートアップ。ようやく、渋々といった不満げな顔でテーブルの上に乗った2万円を娘が取りに来ると、私は怒りに任せて娘の身体を少し小突くように押してしまいました。その余波で、私と娘の間にあった諭吉さんはもみくちゃになり、ひらひらと床の上に舞い落ちていきました。

そのお金をひったくるように取っていた娘にイライラしながら、ケンカしたいきさつをひろしさんに話しました。すると、思いもしない言葉が返ってきたのです。

「どうして疲れていると言っているのに、無理に取りに来いと言うんだ。テーブルに置いといてと言うなら、そうすればいいだけだろう。

珠代さんも態度にショックを受けたのかもしれないけど、娘さんは母親に身体を押されてどんな気持ちだったか分かるか。

珠代さんは大人だから、明日になればこのケンカも流せるだろう。だけど、娘さんの心には母親に押されたことが傷として残るかもしれない」

そう言われて、自分がどれだけひどいことをしたのかが理解できました。相手が娘ではなかったら、きっと身体を押したりしなかった。だとしたら、娘にだってしてはいけないことなのです。

私が言葉以外の方法を取ったのは「親が言っているんだから」と無意識に宿っている押し付け。以前あんなに大きなケンカをしたのに、私はまた間違えたのです。

 

『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』(島田珠代:著/KADOKAWA)