娘の推し

私が芸人をしているので、娘が学校でいじめられないかというのは、長年心配していました。娘には、もしいじめられたら引っ越してもいいと思っていること、とにかくなんでも話すことなどは伝えてきたつもりです。

それでもやっぱり心配な私は、あるとき酒井藍ちゃんにこの悩みを話したことがあります。すると藍ちゃんは男気あふれる様子で一言。

「もし娘さんがいじめられたら、すぐに呼んでください。いじめたヤツのところに怒鳴り込みに行ったりますから」

娘と藍ちゃんは面識もあり、一緒にご飯を食べることもあるのですが、会うたびに「なんでも言いや? なんでもいいから! なっ?」と娘に声をかけてくれます。

藍ちゃん自身が三きょうだいの一番上ということもあってか、すごく面倒見がよくて、娘も気を許しているようです。傍から見ていると、まるで姉妹のよう。もしかしたら、娘にとってもそのくらい近い存在なのかもしれません。

自分を守ってくれる存在がいると知ってから、娘は藍ちゃんのことを《推し》として見るようになったらしく、藍ちゃんがニカッと笑っている写真を机のうえに飾っていて、「私はこの写真を見ているだけで心が豊かになるの」と話していました。

いつもの私だったら、娘のそんな姿を見て「じゃあママはいなくていいね」と卑屈になってしまいそうなのですが、なぜかそんな気持ちにはならないのです。

私の子どもを愛しているのは、私だけじゃない。

それが、どんなに心強いか。一見、娘に寄り添っているような藍ちゃんの言動が、私にも寄り添ってくれているのを感じる。それが卑屈にならない理由なのかもしれません。

 

※本稿は、『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』(著:島田珠代/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論(著:島田珠代/KADOKAWA)

唯一無二の持ちギャグで、新喜劇を長きに渡り支えている看板女優の島田珠代。
酸いも甘いも知りつくした彼女が、人間関係や仕事、恋愛、自分らしさ、そして女として生きることなどを赤裸々に語った自身初のエッセイ。笑いあり涙ありのエッセイを読めば、人生のヒントが見つかるかも?
巻末には推しと公言するロングコートダディ堂前さんとの対談も収録。