「古民家暮らし」のメリットとデメリット
日本家屋であれば床は厚みのある無垢の板、柱はケヤキやヒノキの太い無節(むぶし)を使い、天井は薄く板を引いて竿を流した佇まい。建具も杉や松がふんだんに使われ、触れてもヒヤッとしないぬくもりを感じ、心も温まる。
洋館であれば漆喰(しっくい)の白い壁が優しい陽光を隅々まで届け、ソーダガラスの窓から見える景色が幻想的に映る。乳白色の照明の温かみある明かりや真鍮(しんちゅう)の取っ手も美しい。
畳に大の字になって寝転がれば、イグサの香りと高く開放的な天井に晴れやかな気持ちになる。この高い天井のおかげで夏は比較的涼しい。
その半面、冬はとてつもなく寒い。断熱材はないし、木製窓からは隙間風、床下はそのまま土だし天井は高い、場所によっては小屋裏部分がむき出しだからである。
というわけで、この手のリフォーム相談で一番多いのは寒さからの脱却だ。予算をかける場所は優先度順に浴室・洗面所、キッチン、トイレとなる。その次が居間で、壁に断熱材を入れ、床暖房を設置する。ここまでで1000万円はかかるだろう。
寒さ対策以外にも、家が傷まないように外部の塗り替えも必要だ。古民家は凝った造りなので塗り替えをするにも別途工事が多く、どうしても割高になる。
「このあと、何年住むか?」を念頭に置いて費用対効果を考えることも肝要だ。現代では材料費の高騰や職人の高齢化でメンテナンス費用がうなぎ上りである。
維持費が負担になり建て替えるか悩んでいるというケースも多い。個人で住むとしたら店舗併用住宅として再生するのがいいと思う。
それ以外でどうしても住んでみたいということであれば、無償か格安での譲渡、もしくは取り壊しまでの期間限定で安く借りられるといった条件で探すのが理にかなっている。
※本稿は『人気建築家と考える50代からの家』(草思社)の一部を再編集したものです。
『人気建築家と考える50代からの家』(著:湯山重行/草思社)
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