変わり者のパートナーひろしさん
そして私を支えてくれる大切な存在がもう一人。一緒に暮らしている現在のパートナーのひろしさんです。ひろしさんは私が娘とうまくいかずもがいていた頃に出会って、随分と支えになってもらいました。ひろしさんは読書家でインテリなので、私が思いもよらない広い視野からのアドバイスをくれるのです。その支えがあって、娘との難局を乗り越えることができました。
難点といえば、ひろしさんが超のつく潔癖症の変わり者だということ。キスだってひろしさんにとってはかなりハードルが高いのです。記念日だけはサービスで舌を数ミリだけ出してくれるくらい。手は皮が剥けるほど入念に洗いますし、信用できるタオルでないと触ることすらできない。そんなひろしさんは作家志望だったのですが、今は内科のお医者さんをしています。
勤務医なので毎日忙しいだけなのに、彼にも私はヤキモチを焼いてしまうんです(笑)。「こんなに遅くて女といたんじゃないの?」と問い詰める私に「僕は濡れ衣を着せられ過ぎて、いつも周囲に水溜りできるよ」と、いつも呆れ顔。娘は大抵ひろしさんの味方で、あらぬ嫌疑をかけられる彼に同情しています。「ああ、またママに虐められて、ひろし、本当にかわいそう」娘はそう言って嘆いてますね。
ひろしはひろしで娘の立場を代弁します。私が娘が授業に使う水着の代金を用意した時のこと。「受け取りに来て!」と私が言うと、自室にいる娘は「もう眠いからテーブルに置いといて」とつれない返事。ありがとうすら言わない彼女にカチンときた私は「手渡しで受け取らない限りは渡さない!」と怒鳴り散らしました。結局言い争いになり、私がドン!と娘を突き飛ばすことに。見ていたひろしさんに「見守れ、珠代さん。『置いといて』と言われたなら置いておけばいい。母親に押されて娘がどんな気持ちか考えたのか」と言われました。そう言われて私は、娘じゃなければ取らない言動だったな、と反省し、謝ることができたのです。
いつもつまらないことでカリカリする私に向かって、冷静になるよう繰り返し言葉をかけてくれるひろしさん。娘と暮らし始めて、魂を磨くという境地に入った私にとって、ひろしさんこそ私の魂を磨いてくれる存在なのです。
実は私、ブスだブサイクだと言われることは今も昔も快感なのですが、過去には「年増」に見られたくないという変なこだわりをもっていました。それを捨てることができた瞬間があります。魂を磨く気持ちでふと鏡を見たら「おばちゃんやん!」と…自分のことがやっとわかったんです(笑)。一皮剥けた私は“おばちゃんダンス”を編み出しました。
わが子が「お前の母ちゃん、テレビでこんなんやってたなぁ」と揶揄されるのではないかという心配は、母である女芸人みんなの頭の片隅にあるのではないでしょうか。私はそれを逆手にとって、テレビでも舞台でも全身全霊で突き抜けた姿を見せつけることで娘を守れたらと思うのです。「あいつに何か言って、あの母ちゃんが俺のとこ来たら怖いわ」となるところまで猟奇的であれと日々、芸に磨きをかけています(笑)。
辛いことがある方もない方も、そんな私の舞台を見て、心を空っぽに笑っていただけたら幸せです。