私たちが糖や脂肪を欲するわけ
私たちは、糖であるグルコースだけでなく、脂質を含む食べ物を食べても美味しいと感じます。
というのも、ヒトだけでなくさまざまな動物にとって糖と脂質は、エネルギーを豊富に含む必須の栄養素であるためです。
糖と脂質を好んで摂取することを確かめるために、次のような実験が行われました。
マウスに、脂質として大豆油の含まれる溶液(甘さはない)と人工甘味料が含まれる溶液(甘さはあるが糖と脂質は含まない)を自由に飲める状態にして与えます。
すると、実験開始初日は、マウスは甘い人工甘味料液を選択しますが、その後は甘さのない大豆油を選択するようになります。
この大豆油を選択する際に、舌の味覚情報や消化管からの情報が伝えられる延髄の孤束核のニューロンが活性化することがわかりました。
ニューロポッド細胞には、甘味受容体だけでなく、大豆油のような脂質を感じるための脂肪酸受容体も発現していました。
これは、ニューロポッド細胞が脂質の情報を感知し、その情報をシナプス結合している求心性迷走神経を介して延髄の孤束核へ伝達しているためではないかと考えられました。
そこで、求心性迷走神経を手術によって切断すると、予想どおりマウスは大豆油を選ばなくなったのです。