近所の人気者に

この頃、気づくと父はご近所の人気者になっていました。父が手押し車を押しながらひょこひょこ歩いていると、あちこちから声がかかるのです。

『あの世でも仲良う暮らそうや 104歳になる父がくれた人生のヒント』(信友直子/文藝春秋)

「お父さん、どうしよる? 元気?」

そして父も、朗(ほが)らかに答えます。

「おう、元気にしよるよ。ありがとね」

昔の内気でおとなしい父からは考えられない社交的な姿に、私は目を見張りました。

そして更に驚くことに、私がいない時には、父はご近所さんからおかずをいただくことも多いと言うのです。

「今日は娘さんがおらんのなら、食事に困るでしょうと言われての。『ウチでおでんを作ったけん持って行きんさい』言うて、この間もうまいおでんをもろうたわ」