近所の人気者に
この頃、気づくと父はご近所の人気者になっていました。父が手押し車を押しながらひょこひょこ歩いていると、あちこちから声がかかるのです。
「お父さん、どうしよる? 元気?」
そして父も、朗(ほが)らかに答えます。
「おう、元気にしよるよ。ありがとね」
昔の内気でおとなしい父からは考えられない社交的な姿に、私は目を見張りました。
そして更に驚くことに、私がいない時には、父はご近所さんからおかずをいただくことも多いと言うのです。
「今日は娘さんがおらんのなら、食事に困るでしょうと言われての。『ウチでおでんを作ったけん持って行きんさい』言うて、この間もうまいおでんをもろうたわ」