海原 母は外ヅラがいいので、私はよく周りから「良いお母さんですね」と言われましたが、家ではまったく違う。じつは小学生のとき描いた母の似顔絵が残ってるんですが、顔の半分は菩薩のようで、半分は夜叉の表情でした。
伊藤 そうなんですか。子ども心に変だと感じていたんですね。
海原 小学校で「尊敬する人は」と聞かれると、同級生が「お父さん、お母さんです」と答えるのが信じられませんでした。とてもじゃないけど、ああいう人になりたいとは思えなかった。
伊藤 どういう部分で?
海原 嫌なことは人に押し付ける、弱い者にあたる、感情のコントロールが利かないなど、本当にいろいろ。でも最たるものは、母が人生で重きをおいたのが地位やお金、人と比べて勝つか負けるかだったこと。結果、私は行きたくもない私立のお嬢様学校を受験させられて。
伊藤 勉強に関しても、さぞや厳しかったんじゃないですか。
海原 私は獣医になろうと思ったくらい動物が好きで、手乗り文鳥を飼ってすごく可愛がっていたのだけど、ある日小学校から帰ったら、鳥籠がないの。
伊藤 うん。
海原 「どうしたの」と聞いたら、母が「人にあげちゃった。鳥とばかり遊んで勉強しないから」って――。鬼だと思いましたね。
伊藤 では、海原さんが無事医学部へ入って医師になったときは、大喜びだったでしょう。
海原 それはもう(笑)、自分の手柄だと思っているから。でも、私が何をやってもどう頑張っても、母が私を認めてくれることは一度もなかったんです。