IKKO でも美容院で働くようになってからも、男は男らしくというのが経営者の方針だったんです。そこで、売り上げが1番になったらメイクして店に出てもいいですか? って訊いたらOKが出て。

駆け出しだったのでシャンプーとブローしかやらせてもらえなかったんですけど、月に100万円の売り上げを立てて、自由の身となりました。

湯川 100万!! 凄いわねぇ。一体、どんな魔法を使ったの?

IKKO トークだと思います。それまで私は、人の感情に触れなければ自分が傷つくこともないと考えて、あまり積極的に人とかかわらなかったんです。でも、意外と社交的にもなれるんだという発見がありました。

湯川 やがて美容家として独立するわけだから、技術やセンスも抜群だったのでしょう。

IKKO 30歳で独立したものの、スタッフを雇うようになってコミュニケーションの壁にぶち当たりました。私は自分の心を守るために、他者に対して無関心で、つまり感情が薄かったんですね。でもそれでは人を育てることはできない。

人の心に寄り添って、ダメ出しをするときも言葉を選んで、ユーモアを大切にと、少しずつ自己改善していきました。

湯川 IKKOさんはお優しいのよね。私は「どんだけ~」という言葉を聞いて感心しました。たとえば人と話していて「この話はこれ以上聞きたくない」という場面があったとして、「ちょっと黙ってくれないかしら」なんて言ったら角が立つじゃない? でも「どんだけ~」って言えば、相手を傷つけることなく、しかもストレスを解消できる。天才的ですよ。

IKKO あれは私が作った言葉ではなく、もともとオネエ業界で使われていたものなんです。テレビに出て言葉に詰まった時に思わず発したら、びっくりするほどウケまして。以来、島田紳助さんや明石家さんまさんが番組に呼んでくださるようになったのです。

最初は、イントネーションが面白がられているのかな、と思っていたんですけれど……。

湯川 「どんだけ~」は立派なコミュニケーション術ですよ。この手があったかと多くの人が思ったからこそ広まったのでしょう。私は使えないけど。(笑)

IKKO 嫌なことを言われたら「背負い投げ~」、空気の読めない人だわと思ったら「まぼろし~」と笑いながら言うことを併せてお勧めします。(笑)

後編につづく