佐倉の味方になり切れない

土方からの被害を公にしようとした佐倉に対し、恵は「こういうのは証拠がないと、ただ告発するだけじゃかえって佐倉さんの立場が悪くなるだけだと思うんです」と小川の発言に流され、佐倉の味方になり切れない。佐倉は「ごめん、面倒なことに巻き込もうとして」と言って去ってしまう。

そして、「所内でのハラスメント行為に関する通報」と題して、佐倉は一斉送信で、土方からセクハラを受けていること、他の非正規職員も被害に遭っている可能性があるため、至急調査してほしいという内容を送ったのだった。

恵が佐倉に話しかけようとしたところ、他の社員たちは恵だけに声をかけ、ランチに誘い、連れ出した。そこで社員たちから、次々とセカンドレイプ発言が飛び出すのだ。

『死ねない理由』表紙(著:ヒオカ/中央公論新社)
『死ねない理由』(著:ヒオカ/中央公論新社)

「土方さんがセクハラするなんて考えられない」

「アレだったらどうする? 逆恨み。フラれたはらいせとか」

「あんなメール出して、涼しい顔で出勤してくるなんて、メンタル鋼だよね」

「確かに、普通は針のむしろだと思うけどね」

土方にあらぬ疑いをかけ、騒ぎ立てた張本人とされた佐倉は職場を去ることになる。そして、土方のターゲットが恵に移るのだ。

土方は、ひとりでいる恵にこう話しかける。「佐倉さんのこと、残念だったね。町田さんは次の更新も大丈夫だと思うよ。僕が高く買ってますから。せっかくだから近々親睦会でもしようか」。肩を触られた恵は、精神的に追い詰められていく。