おかしいことはおかしいって言いたい

恵は、やっと佐倉が受けたハラスメントの被害の深刻さを実感し、佐倉に謝罪する。

「あの時、佐倉さんの力になれなかったこと、すごく後悔してます。もう遅いかもしれないんですけど、私も声を上げたいと思っています。」

「そんなことしたら、町田さんまで仕事を失うことになるかもしれないよ」

「それってすごく理不尽ですけど、でも、それでもおかしいことはおかしいって言いたいんです。私も、土方からずっとハラスメントを受けていました。気持ち悪いメッセージしょっちゅう来てたのに、自分は大丈夫だって思おうとしてたんです。これがハラスメントだって認めてしまったら、自分が被害者みたいな、弱い存在みたいな、そういう惨めな気持ちになるのが嫌で。一緒に戦いましょう」

イメージ(写真提供◎Photo AC)

被害を被害と認めてしまったら、自分の精神がしんどくなる。だから、受けたことをすぐに被害だと受け入れられない、という人も多いのではないだろうか。

恵は、土方だけを追求しても、根本的な解決にならないということに気づく。恵や佐倉に起こった問題は、非正規公務員が置かれる立場の問題であり、「評価基準がはっきりしてないなかで雇い止めできてしまう今の制度が産む問題」として、問題解決に向け署名運動を立ち上げる。

恵も結果的に職場を去ることになったが、その後職場では他の非正規職員たちが声をあげ、土方のハラスメントの証拠を提出。土方は懲戒処分に追い込まれた。