24時間マラソンで数々の有名人走者をトレーニングし、伴走する姿でおなじみの坂本雄次さん。坂本さんは100kmの”ウルトラマラソン”を各地でプロデュースした、市民マラソン界のレジェンドでもあります。その坂本さんを61年間支えてきたのが奥様の節子さん。2024年3月に亡くなられましたが、各地の大会では参加者をサポートする節子さんに勇気づけられる人も多かったそう。今回その坂本さんが奥様との関係を記した著書『天国ゆきのラブレター』より、ランニング企画・運営専門会社「ランナーズ・ウェルネス」社を起業したときの話題をご紹介します。

ふたりきりでの起業

45歳で東京電力を辞めた私は、ランニングで社会に貢献する事業を始めようと考えた。

当時、全国各地で数多くの市民マラソン大会が行われていたが、そのほとんどが地元の自治体が主催するものだった。

大会の内容を考えるのは、市や県の教育委員会や地元の陸上競技協会、そして役所の企画課などだった。マラソン大会の企画や開催のプロデュースをする事業はほとんどなかった。

起業にあたり、これまで雑誌に寄稿する側としてつきあっていた、ランニング専門誌を発行する会社の社長と編集長にも、事業展開について相談に行った。彼らの会社はランニング大会の運営も手がけていたので、競合は避けたかった。

彼らからのアドバイスは、まだ国内ではあまり開催されていないウルトラマラソンのプロデュースを手がけてみては、というものだった。そして、私たちの起業に快く賛意と応援の意を示してくれた。