企業や団体が不祥事を起こしたとき、外部の専門家に委嘱して設置される「第三者委員会」。本来は問題の解明や事実関係の明確化を図るための組織ですが、「第三者委員会報告書格付け委員会」に所属する会計学者の八田進二さんは「大半の第三者委員会は、真相究明どころか、身の潔白を『証明』するための<禊のツール>として機能している」と指摘しています。今回は八田さんの著書『「第三者委員会」の欺瞞-報告書が示す不祥事の呆れた後始末』より一部引用、再編集してお届けします。
東京オリンピック招致をめぐる疑惑
東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が、元国際陸上競技連盟会長の子息が関係するシンガポールのコンサルタント会社に約2億2000万円を支払った、とフランスの検察当局が公表したのは、東京開催が決まってからおよそ3年後の2016年5月のことである。
当時、招致委の理事長を務めていたのが、竹田恆和日本オリンピック委員会(JOC)会長だ。
例によってJOCは、その月のうちに、独立性を有するとされる弁護士2名と公認会計士1名などから構成された「調査チーム」を立ち上げる。
調査の主眼は、このコンサルタント契約における契約金額、成果、締結過程の適切性を検証することにあった。具体的には、疑惑のベールに包まれたコンサル会社や、その代表者の真の姿を明らかにするのが、その使命だった。