ゲームやバーチャルな世界に浸ることができる人は、日常と非日常をわりとスムーズに切り替えることができるかもしれません。

メタバースのような仮想空間がさらに進化して、たとえ体力が衰えて寝たきりになったとしても、スイッチ一つであっという間にニューヨークの街に行けて、素敵なアメリカ人と本当に恋愛をしているような気持ちになれる世界ができたりすると、高齢期の楽しみも広がりそうです。

気軽に非日常の世界に入り込めるという点では、映画館もおすすめです。例えば、「仁義なき戦い」のような映画を観終わった後は、まるで自分がやくざになったかのような気分になって肩を怒らせて歩いてみたり、恋愛映画を観た後は自分も恋しているような気分になったり……。そんな経験をしたことのある人も少なくないのではないでしょうか?

映画館でしか味わえないあの没入感は、日常のストレスから私たちを解放してくれる貴重なものです。テレビのスクリーンがどんなに大きくなっても、同じような非日常の空間は作り出せないでしょう。

アメリカなどでは、いまでも映画館で映画を観るという文化が根づいており、多くの人が映画館という異空間での非日常を楽しんでいます。しかし、日本ではその習慣が薄れてきているのが残念でなりません。ネットフリックスなどのストリーミングサービスで、昔観た懐かしの映画を繰り返し観ているばかりでは、脳は老化するばかりです。

脳の前頭葉は、新しいものを観たり聞いたりすることで活性化し、若さを維持します。新作映画を映画館で観る経験は、日常との連続性を絶ち、脳を活性化させる格好のチャンスなのです。

『60代から100歳以上まで 人生が楽しくなる「シニア推し活」のすすめ』書影
『60代から100歳以上まで 人生が楽しくなる「シニア推し活」のすすめ』(著:和田秀樹/KADOKAWA)