「推し」に集中することで不安と上手に付き合えるように
無理なく日常との連続性を絶てるということからも、推し活の最もすばらしい効果は、心の健康に役立つことでしょう。
実は、女性は男性よりもうつ病を発症しやすいというデータがあります。しかも、男女間の患者数の差は、60歳以降、より顕著になっています。2020年の厚生労働省による「患者調査」によると、うつ病・躁うつ病の患者数を同世代の男性と比較すると、60代女性は約1.5倍、70代女性は約2.5倍、80代女性は約2.7倍という数値になっています。
これは大変深刻な状況です。年齢を重ねてからうつ病を発症すると、食欲低下や栄養不足を引き起こし、心身の衰えを加速させます。免疫力も低下するため、がんになるリスクも高まってしまいます。こうしたことからも、高齢者にとってうつ病というのは、認知症以上に恐ろしい病気で、何よりも予防が重要です。
ところで、悩みごとや不安というのは、暇なときこそやってくるものです。心配ごとにばかり目を向けていると、心配な気持ちがさらに大きくなります。鬱々とした気分のときに悲観的なことばかり考えていると、どんどん気分が落ち込んでいきます。「そのことは考えないようにしましょう」と言われても、つい考えてしまうのが人間の性質です。
しかし、そんなときに他に何かものすごく集中できることがあれば、心配ごとに費やしていた時間が、別のことに使えるようになります。無理に心配ごとを消そうとするのではなく、上手に目をそらす方法を見つければ、ストレスや不安をやわらげることができるのです。悩みごとや不安を忘れさせてくれる何かがあるということが極めて大切です。