この世界に俺は絶対行きたい

第2の転機は、演劇との出合いではないかという気がする。初舞台は1989年、蜷川幸雄演出の『唐版・滝の白糸』で少年のアリダ役だった。『蜘蛛女のキス』はその2年後。

――そうですね。山崎努さんとテレビでご一緒した時、本番でも急にアドリブでいろんなことをやってくるので、それに応えたら結構可愛がってくださって、「役者は絶対に舞台をやるべきだ」って言われたんですね。

18歳の時に『唐版・滝の白糸』のオファーがあって、何もわからないけど共演が松坂慶子さんと聞いて、絶対出る、って言って。蜷川さんから「台詞は全部覚えて来てね」って言われて、稽古場に行って初めて舞台の役者さんを目にしたんですけど、もうなんだか別世界(笑)。女優さんも平気でおっぱい丸出しにしてたり、サーカス小屋みたいないろんな大人たちのエネルギーがすごいんですよ。

松坂さんも、最初に挨拶した時と、稽古が始まった時とは別人で、その役の人になってる。こういう世界があったんだ、演劇というこの世界に俺は絶対行きたい、と思ったわけなんです。

この時、男闘呼組として活動はしてたんだけど、30歳過ぎたらもうアイドルは無理だろうから、これからは無名でも何でもいい、舞台役者をめざそう、と強く思ったんですね。

それで、22歳の時に出た『蜘蛛女のキス』ですけど、そこでアメリカ出身の演出家、ロバート・アラン・アッカーマンさんと出会いました。ベニサンの稽古場の中に囲いをつけて、俺と村井国夫さんと演出家と通訳しか入れない完璧なプライベート空間で稽古するの。

ああいう男同士の愛の話で、ここなら素っ裸になろうが何をしようが大丈夫というふうにしてくれた。俺、女の人大好きだけど、物語的に男を本当に好きにならないとOKが出ない。

でもそのうち、演出によってそのシーンの中では性的反応が起こったりするわけですよ。やっぱり演劇のそういうすごさを極めていきたいな、と思ったから、やっぱり第2の転機はこれかもしれない。