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厚生労働省が公表する「令和3年度 医療保険に関する基礎資料」によると、1人が生涯にかかる総医療費は約2800万円(自己負担は最大3割)だったそうです。お金の不安がなく、健康なシニアライフを送るにはどうすればよいのでしょうか?今回は<健康のプロ>医師・鎌田實さんと<お金のプロ>経済ジャーナリスト・荻原博子さんによる共著『お金が貯まる健康習慣』から一部を、お二人の対談形式でお届けします。

70代以上になったら「ちょっと太め」が安心なわけ

荻原 私は68歳で少しやせたんですけど、それ以上はなかなかやせられないんです。

鎌田 荻原さんは、いまおいくつ?

荻原 ちょうど70歳です。

鎌田 じゃあ、いまくらいでちょうどいいですよ。70歳を過ぎたら、ちょっと太っているくらいの人のほうが、やせている人よりも長生きだってご存じですか?

荻原 そうなんですか! 知りませんでした。

鎌田 「肥満パラドックス」っていわれているんです。中年期には、体重が増えると病気も増えるので「やせなさい」といわれますが、高齢になると、やせている人のほうが死亡率は高くなるんです。「肥満は厳禁」とされている糖尿病でさえ、軽い肥満の人とやせている人を比較すると、軽い肥満の人のほうが長生きだというデータもあるんです。

荻原 不思議ですね。どうしてですか?

鎌田 70歳以上になると、問題はメタボよりも「フレイル(虚弱)」です。フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間に位置する段階で、運動機能の低下や精神面の衰えが目立つ状態です。とくに筋肉が減ってフレイルになるケースが多いので、下手なダイエットなどしたら命取りです。70歳を過ぎたら「ちょい太」がいいって、ぼくはずっと言っているんです。

荻原 「ちょい太」ってどれくらいまで?

鎌田 BMIの標準値は「25」までですが、「27」くらいまでがちょうどいい範囲だと、ぼくは思っているんです。

荻原 そうですか。目からウロコです。