(写真提供:Photo AC)
何度注意しても遅刻がなおらない、場の空気を読むことが苦手……。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの総称である「発達障害」という言葉が一般的に浸透してきています。そのようななか、1万人以上をカウンセリングしてきた公認心理師の舟木彩乃さんは、発達障害の傾向がありながら診断がついていない「グレーゾーン」の人たちがいることも指摘しています。そこで今回は、舟木さんの著書『発達障害グレーゾーンの部下たち』より一部を抜粋してご紹介します。

部下がグレーゾーンかも? と思ったら

診断名にこだわらない

発達障害に関して、カウンセラーである筆者のところに相談にくる人は、本人が「自分は発達障害かもしれない」と思っているパターンのほか、「部下が発達障害かもしれない」と部下の発達障害を疑う上司も少なくありません。

後者の場合、上司は、部下の仕事ぶりや言動に悩まされていることが多く、すでに両者の人間関係に問題を抱えている場合がほとんどです。

筆者は、上司のメンタルケアなども視野に入れながら、どのような言動から部下の発達障害を疑うに至ったのか、そのエピソードを丁寧に聞くようにしています。

それと同時に、部下を発達障害と決めつけているような上司に対しては、疾病性(診断名)にこだわるのではなく、事例性(仕事に出ている影響)で検討していくよう促すことを心がけています。そのうえで、「どのようなことで具体的に困っているのか」「上司や同僚でフォローできそうなことはあるか」について話し合うようにしています。

当然ですが、上司の話だけで部下が発達障害か否かをジャッジすることは不可能で、そもそもASDとADHDの診断基準ではカテゴリーが重なり合っていたりすることもあるため、医学的な分類が無意味というケースもあります。