(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
遺跡や遺構から歴史を研究する<考古学>。日々発掘調査に出かけていると思われがちな考古学者ですが、古代エジプトを専門とする駒澤大学文学部歴史学科の大城道則教授によると、ここ数年は10日連続で時間を取ることができないほど多忙を極めているそうで――。そこで今回は、考古学者の青山和夫さん、角道亮介さんとの共著『考古学者だけど、発掘が出来ません。 多忙すぎる日常』から、大城教授のリアルな日常を一部お届けします。

古代エジプト史を極めるため

人一倍せっかちな性格の私は、大学に入学してすぐにヒエログリフを教わろうと教授棟にある加藤一朗先生の研究室の扉を叩いた。古代エジプト史を極めるには、まず古代エジプト文字であるヒエログリフ(神聖文字)を読めるようにならないとダメだと思っていたからだ。

最初に訪ねた際には、丁重に断られた。理由は簡単で「大学院生にならないとヒエログリフは教えられない」というものだった。二度目もだいたい同じような理由で断られた。

立場が同じとなった今なら先生の考えも十分に理解できる。現実的に考えて、学部生にヒエログリフを教えるような時間はないのだ。現在ほどではないとはいえ、大学教員は忙しいのだ。授業以外に学生に時間を使うとそれはそのまま自分の研究時間を削ることを意味するからだ。

それに語学は教わるものではなく、地道に自分でコツコツ身に付けるものだと思っている。当時の私は迷惑な学生であったと思う。