児童劇団での3年間の子役経験

ちなみにその映画の配役は、母親役が原泉さん(詩人で作家の中野重治さんの奥様)で、長男が鈴木昭生さん、次男が小林昭二さんだったと後になって分かった。新劇界の大先輩たちだった。

文学座に入ってその原泉さんとNHKのドラマでお会いした。お年を召していらしたし、ちょっと厳しそうな方なので恐る恐る「原さんあのー20年前の『嫁が来てから』という映画、覚えていらっしゃいますか?」と質問すると、「覚えてるわよ、今泉ちゃんが監督でね、いい映画だったけど、あの時は喘息の子がいてね。可哀そうで大変だったわ」と仰(おっしゃ)ったので、「その喘息の子、僕です」と言うと、原さんは大いに懐かしんでくれ、「それで喘息のほうは大丈夫かい」と尋ねてくださった。優しいおばあちゃんだった。

小林さんには『ゴジラVSキングギドラ』という映画でお会いして、「あれは君だったのか」と、やはりとても懐かしんでくれた。児童劇団の3年間で、少しだけ大人の世界を垣間見た気がした。

いい役をもらった直後だったので、「ここでやめてしまうのはもったいないですね」と、児童劇団の方から言われたが、「もうやりたくない」とそれしか口にしなかった。

もしあのまま子役を続けていても今のような俳優にはなっていなかったのでないか。ちやほやされて増長し、鼻持ちならない奴になっていたかもしれない。

3年間子役としての経験を積んだ後、一旦演劇から離れたことは結果的に良かったと思っている。

※本稿は『未完成』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


未完成』(著:西岡徳馬/幻冬舎)

「まだ、足りねえ……!」
人生は演じることの繰り返し。喜びも悲しみも、演技こそが己の魂を呼び覚ます。
懸命に生きる全ての人へ、お祭り騒ぎの初自伝!!

新境地を開いた「幕末純情伝」、一世風靡した「東京ラブストーリー」。そして2024年、エミー賞最多部門賞受賞「SHOGUN 将軍」。高倉健、勝慎太郎、つかこうへい、蜷川幸雄、杉村春子といった英傑たちの等身大の生き様。
人生78年。役者歴半世紀以上。
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