理不尽には声をあげていい

冒頭の話に戻ると、雪の日だけでなく、昨年の死人が出そうな酷暑の日でも、住宅展示場の案内で従業員が帽子も被らず一日中日陰もない場所に立ちっぱなしで働いているのを見たことがある。そういった、体調や下手をすれば人命に関わることは人権問題なのだ。

その仕事を選んだのだから、そこで起きるすべての理不尽、さらには人権が蔑ろにされることを受け入れろというのはどう考えてもおかしい。誰にだって最低限の権利がある。

『死ねない理由』表紙
『死ねない理由』(著:ヒオカ/中央公論新社)

例えば、好きで選んだ仕事だとしても、実際にはじめてみて酷い待遇やハラスメントにあったとしたら、そういった理不尽には声をあげていい。好きで選んだのだからすべてを受け入れろということにはならない。

また、非正規の人で言うと、今ある仕事は必要だから存在しているのであり、その人が辞めたところでまた誰か新しい人が入り、その人がまた同じ不利益を被ることになる。今いる人たちの声を聞いて、待遇を改善し、誰もが働きやすい環境を作ることに繋げた方が、「嫌なら辞めろ」と切り捨てるよりよほど建設的で、社会全体のためではないだろうか。