「嫌なら辞めろ」は万能薬でも正論でもない
嫌なら辞めろ、他にも選択肢がある、というのなら今悩みがある人や困っている人は、みな他に選択肢があるのに踏み出していない、自分の責任だ、ということになってしまわないだろうか。人間、誰しもあらゆる選択肢はあれど、今の環境に悩むものではないだろうか。夫や妻に不満があるなら離婚すればいい、会社が嫌なら転職すればいい、環境に不満があるなら引っ越せばいい……それを突き詰めていくと、この国が嫌なら外国にいけ、人生が嫌なら死ねばいい、ということになる。それができないなら文句を言うな。そんな社会はなんと息苦しいことだろう。
もちろん環境を変える行動力は大事だが、その労力は人によって違うし、そう簡単にはいかないからみな悩むのではないか。それに、環境を変えて他の選択肢を取ったところで、うまくいくとも限らない。
不満や怒りを持つ人を極端に忌み嫌う人がいるけれど、不満や怒りは、状況を改善していくためには言わないといけないこともある。理不尽を受け入れることが美徳とされている風潮があるけど、そんなことはない。時には言って、一緒に改善していくことも必要だ。文句があるなら去れ、ではなく、今いるところから見える問題点をクリアにし、改善していけばいい。
「嫌なら辞めればいい」という言葉や考え方は万能薬でも正論でもない。それで片づけるのは思考停止だし、建設的な議論を生まない。自己責任論で片付ける前に、今いる環境をどう変えていけるのか、考えてみてほしいと思う。