師匠の教え

8日目に先場所引退して親方となった元横綱・照ノ富士が、初めてNHKテレビの解説をしたが、分からないことが解明されて、学びが多かった。

最も学んだのが、前頭7枚目・正代が立ち腰で相撲を取っている理由。「足首がかたいからどうにもならない。鍛え方で変わらないことはないが…」と、照ノ富士親方は説明した。現役の時に正代とよく稽古をしたのは、当たりを確かめやすかったからだそう。

前頭8枚目・熱海富士についても興味深かった。師匠の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)が解説をした時、熱海富士が登場すると、いつも急に愚痴のような口調になり、悪いところを指摘していた。伊勢ヶ濱部屋で指導をする照ノ富士親方も、熱海富士が出てくると同じような口調になり、「熱海富士に相撲を教えていて、自分で悩むくらい、俺が悪い教えをしているのかと思う。どうやって教えてよいかわからなくなる」と嘆いていた。しかし、熱海富士が大いに期待されていることは確かだ。

7日目の幕内の取組前に『師の教え 西岩親方(元関脇若の里)横綱隆の里の教え』というのがあり、西岩部屋の師匠である西岩親方が登場し、師匠であった鳴戸親方(元横綱・隆の里)の教えを紹介した。「自分の頭で考えろ」だ。相撲については一通り教えるが、その後は自分で考えろという意味。西岩親方は「さらに大きくすると、自分の人生でどういう風に考えて生きていったら良いかにつながってくる」と話していた。なんと、すり足の稽古で重みをつけるために抱く四角い石に、鳴門親方自身が「自分の頭で考えろ」と書いたそうだ。私は極力自分の頭で考えないようにしてしまうので大反省。いつも持つバッグに「自分の頭で考えろ」と書いて歩こうかと思った。

10日目の大相撲をNHKテレビで観戦してから、日本テレビで東京ドームでの『MLB開幕戦 シカゴ・カブス×ロサンゼルス・ドジャース』を観戦した。私が現役の記者をしていた時、東京ドームで大手企業が大規模な運動会をして、珍しいのでマスコミが集まり、その記者席が監督や選手たちが待機するダッグアウトだったのを思い出した。こんな風に試合が見えるのだと大感激したが、隣に座っていた記者が、まだ運動会が始まらないのに、予想で原稿用紙のマス目を埋めているのに驚いた。その頃はまだパソコンを打ちまくる記者がおらず、手書きだった。

大相撲は千秋楽まで5日ある。「高安、初優勝」の記事を、既に書いている記者はいるのだろうか?と考えてしまい、どこまでも相撲頭脳の自分を感じた。

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