悪気がないのに、自慢になってしまう

話のきっかけとして軽くするのはまあいいだろう。気の利いた話題にすることはできる。しかし、ずっとそれを続けられると、聞いているほうとしてはたまらなくなる。

「私はほかの人と違ったところがある。アピールするところがある」という思いが、マイナス自慢につながる。

ある種、ゆがんだ自己愛とでもいうか、周囲にもそれが伝わる。これも一つの自己顕示にほかならない。だから、マイナス自慢を繰り返す人は愚かに見える。

誰もがついしてしまうのが忙しさ自慢だ。「寝る間もないんですよ」「1週間で3回目の出張ですよ」「デスクの上には半年でも終わらないほどの仕事がたまってますよ」などなど。

本人に自慢する気はないことも多いだろう。あまりの忙しさに頭を抱えている。いかに大変かをほかの人にもわかってほしい、ねぎらいの声をかけてほしい。そんな気持ちから口にする。

しかし、それは言葉を換えれば、「私は忙しくしているほど活躍しているんだ」「それほど引っぱりだこなんだ」という自慢にほかならない。

いや、たとえはっきりと意識していなくても、忙しくしていることを誇らしく思っているのは間違いない。

これは、特に忙しくしたくてもできない人に対しては強烈な嫌みになる。配慮不足であるばかりに、悪気がないのに愚かな自慢になってしまう典型だ。

 

※本稿は『頭のいい人が人前でやらないこと』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

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頭のいい人が人前でやらないこと』(著:樋口裕一/青春出版社)

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