お前はそんな男だったのかーっ 喰らったグーパンチに深謝

担任の顔は紅潮して怒気にあふれているのに、その目には涙が浮かんでいた。そして一瞬の出来事だった。

「お前はそんな男だったのかーっ」と、グーで顔を殴られすっ飛んだ。

『俺たちの昭和後期』(著:北村明広/ワニブックス)

この教師が大好きで尊敬していた。親以外で、自分のことをこれほどまでに理解してくれた大人は初めてだった。だからこそ強いエネルギーをぶつけてくれたのだ。見損なったぞお前、ではあるが、浮かべた涙は見捨てていないことの証しである。痛かった。が、それ以上のぬくもりも受け止めた。

お前は男なのだろうと諭してくれたおかげで、わだかまりを捨て去り心より謝罪でき、許してもらえた。おかげで、本来一生悔やみ続けたかもしれない愚行が、担任よりの愛の想い出へと昇華されている。