立場が人を作る
チームの先頭に立って人を統率するというのは、そもそも面倒くさいものです。気が重くなることも少なくありません。僕も年齢が上がるにつれ、委員会の議長など責任のある仕事を任される機会が増えましたが、そのたびに「しんどいな」「引き受けるんじゃなかったな」などと思うものです。
でも、やれば、やはりそれなりに学びや成長があります。他人の事情を考慮して、それなら自分がやりますと申し出たり、自分より他人の成長を優先しようとする意識も芽生えました。
自分でも想像していませんでしたが、実際にリーダーの立場に置かれたり責任を負ったりすることで、「自分を勘定に入れずに」の気概が育まれていったわけですね。
よく「立場が人を作る」と言いますが、いざやってみたら思う以上に自分の力が伸びた、だからやってよかったということも多い。
ですから君も、責任を負うことのマイナスばかりを考えず、自分を押し上げてくれるチャンスと考えて、前向きにチャレンジするといいですよ。
僕はよく、教師となったかつての教え子から、教頭試験、あるいは校長試験を受けるかどうか迷っているという相談を受けます。
そうした際、受けてみるよう背中を押します。その理由は、実際に教頭や校長など上のポジションになってみると、一教員では見えなかった“景色”がよく見えてくるから。責任も大きいけれど、それ以上に得られるものが大きい。
上のポジションに立つということは、メンタルが鍛えられるということでもあります。これからの人生を生きていくうえで欠かせない、さまざまな物事に対処する力やものの見方を養うこともできます。
逆に言うと、責任ある立場に就かないと、そうした大切な力も身につかないということ。ですから、責任ある立場は早いうちに経験するに越したことはありません。
にこやかに、そしてフェアであることを忘れずに。君らしさを大切にしながら、成長の階段を一歩ずつ上がってみてください。
※本稿は、『悩み続けてきた「僕」から君たちへ ーー社会人1年生に伝えたい成長と成功の本質』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
『悩み続けてきた「僕」から君たちへ ーー社会人1年生に伝えたい成長と成功の本質』(著:齋藤孝/祥伝社)
「なんとか会社に入って一生懸命やってはいるけど、なんか人生思ったのとは違うなあ……」と、ふと考えてしまうすべての社会人1年生へ!
齋藤孝先生が30年間、教え子だけに伝えてきた「逆転の人生攻略法」を初めて明かす!