文明が進み私たちの暮らしは便利になっているはずなのに、なぜか昔に比べて生きにくくなってきていませんか?ロングセラー『定年後のリアル』シリーズの著者・勢古浩爾さんが綴る「なんの変哲もない日々」は、地味だけどなんだか自由――。「あの頃はよかった」と徹底的に懐かしむエッセイ『77歳、喜寿のリアル:やっぱり昔は良かった!?』より一部を抜粋して紹介します。
勤めた会社が零細企業でよかった
わたしが会社勤めをしたのは、昭和47年(1972年)、25歳のときである。神田駿河台にあった小さな洋書輸入会社であった。
年商はだいたい12、3億円ぐらいだったか。従業員は22人ほど、多くても25人ぐらいだった。中小ならぬ零細企業だったといっていい。
もちろん、最初からその会社に入ることを目指したわけではなかった。人はそんな会社を目指さない。そんな会社があることさえ知らない。
わたしが当初目指したのは出版社だった。そのあとは、新聞社に通信社。だが、そんなとこに入って、なにをしたいというわけではなかった。
世間知らずもいいところで、なんとなくよさそうだな、と思っただけである。新聞社や通信社など、正直にいえば、なんの意欲もなかった。
敵はそんなわたしのまぬけな部分を見抜いたのだろう、数社の出版社、数社の新聞・通信社にわたしは落ちた。
それだけではない、その後の、小さな会社―業界新聞社、調査会社、家内製造会社、ピンク映画社(ここは電話をしただけで、受けなかった)など、50社近くをことごとく落ちまくった。