実は脳にも影響する?更年期と“記憶力の関係”
エストロゲンは、卵巣で主に分泌される女性ホルモンであり、生殖機能の調節にとどまらず、脳神経系にも多彩な影響を与えています。
特に注目されているのは、海馬(記憶や学習を司る部位)および前頭前野(判断・注意・感情制御などを担う部位)におけるエストロゲンの作用です。
エストロゲンは、脳の神経細胞がつながりやすくなり、情報の通り道である神経回路がよりしっかり整うように助けてくれます。これによって、新しい記憶を形成しやすくし、情報処理スピードを保つことができるのです。
また、エストロゲンは神経伝達物質の合成と放出にも深く関わっています。
たとえば、感情や意欲、集中力に関係するセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどは、エストロゲンの助けを受けてバランスよく保たれています。
エストロゲンが減少すると、これらのバランスが乱れ、抑うつや不安、記憶力の低下といった精神的症状が現れやすくなります。加えて、アセチルコリンという記憶形成に重要な物質の活性もエストロゲンの低下によって抑制されるため、記憶力の維持が困難になると考えられています。