健康寿命が長い山梨県と静岡県

ただ残念ながら、現代は人とつながりにくい社会になってしまいました。原因のひとつは、核家族化が進んだこと。二世帯、三世帯同居が減り、核家族が一般的になったことで、子どもが巣立ったら夫婦2人きりになり、どちらかが亡くなればひとり暮らしになるケースも多い。

たとえ子どもや孫と同居していても、生活リズムが違えば、食事を1人で食べたり、会話がほとんどなかったりというような家庭内孤立の状態に陥っているケースも少なくありません。

地域のつながりも年々薄くなっています。内閣府の調査によると、1970年代には半数以上の人が近所の人と親しいつきあいをしていましたが、現在は1割ほどに。プライバシーの重視や、「他人に干渉されたくない」と考える人が増えていることが要因です。

また、宅配サービスなど社会的なインフラが充実し、人の手を借りずになんでも1人で解決しやすくなったことで、近所づきあいの必要性を感じにくくなったということもあるでしょう。

確かに便利な世の中ではありますが、このような生活環境は人を孤立させてしまいます。隣近所が親密なつきあいをしていた昭和の暮らし方は、健康にとってプラスの側面が多かったと言えるでしょう。実は、男女ともに健康寿命が長い山梨県と静岡県は、昔ながらの地域のつながりが今でも根強く残っているのです。

山梨県では「無尽講(むじんこう)」と呼ばれる互助活動が盛んで、仲間同士の交流が活発。静岡県は、大きな地震が起こると昔から言われていることもあり、いざという時に地域の住民同士で助け合うという考えが根づいているようです。

さらに、高齢になってもボランティア活動に参加したり、働き続ける人の率が高いという特徴もあります。この2県の例を見ても、地域のつながりの強さが健康寿命に大きな影響を及ぼしていることがわかるでしょう。

後編につづく