これまでの人生で、手に入らない成功や不本意な評価、漠然とした生きづらさなどに悩まされたことはありませんか?「その原因は、実は、不安や怒りにまかせて他人を責めてしまう『外化』という心理メカニズムにある」と語るのは、早稲田大学名誉教授の加藤諦三さんです。今回は、加藤さんの著書『人はどこで人生を間違えるのか』から一部を抜粋しお届けします。
人間は抑圧した感情に左右されてしまう生き物
人はある感情を抑圧すると、その感情に生き方、感じ方を支配されてしまう。敵意を抑圧すると、その敵意に自分の人生を支配される。怒りの処置を誤るということは、生き方を誤ることにもつながる。
人はマイナスの感情を抑圧し、投影する。子どもを「レベルが低い」と責める父親は、自分が社会的に高く評価されていないことが不満である。
自分自身が社会的にレベルが低いことを心の底で知っているが、神経症的自尊心が強いため、それを認めることができない。そこで「お前はレベルが低い!」と子どもを責めることで、傷ついた自分の心を癒やそうとしている。
また、子どもに「エジソンのような発明家になれ」などと言うことで、親は自分の偉さを誇示しようとしているのである。親は深刻な劣等感がなければ、そんな高い基準を子どもに課すことはない。子どもに「エジソンのような発明家になれ」と言う自分を、親は考えようとしない。それを考えることで自分が見えてくるのであるが、その考察は心理的に辛い。現実に直面しなければならないからだ。