(イメージ写真:stock.adobe.com)

 

定年後、年配者としての話し方や振る舞い方が分からず悩んでいる人も多いのではないでしょうか。作家の樋口裕一さんは「キーワードは、フランス語の『サメテガル』にある。フランス人の日常会話でよく使われる言葉で、日本語に訳すと『どっちでもいい』となる」と話します。今回は、樋口さんの著書『70すぎたら「サメテガル」: 「老害」にならない魔法の言葉』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。

年をとるほど白黒つける必要はなくなる

社会の第一線で活動しているうちはイエス・ノーを鮮明にする、白黒をつける場面が多い。態度を決めて、その方向に踏み出す。場合によっては、他者にそれを説得する。反対する人がいたら、議論して、結論を出す。そうしないと物事が進まないからだ。

現役世代の人には、まだ長い未来がある。何にでも「どっちでもいいよ」と言ってやり過ごすわけにはいかない。選択できなかったり先送りしたりすれば、将来、大きな損失や大きな不幸に見舞われるリスクがある。自分の不利益で済むならいいが、家族や組織を巻き込んでしまう恐れもある。いい加減な態度で生きていくわけにはいかない。

社会で生き抜くには主張しなければならない。自分の意見を通さなければならない。アピールしなければならない。競争に負けるわけにはいかない。子どもを育てなければならない。家庭を維持しなければならない。義務がたくさんある。それらをこなすには、自ら何かを決定しなければならない。立場を決めて決断しなければならない。場合によっては派閥に組み入れられて、別の派閥と敵対して行動しなければならない。

しかし高齢になれば、「選択しなければ将来が危ぶまれる」といったことはほとんどなくなるはずだ。