地震の時も靴は重要
靴の話に戻すが、戦中、戦後だけでなく、平成7年3月17日午前5時46分の阪神淡路大震災の経験者からも、靴の大切さを聞いた。
阪神淡路大震災から約1年がたった時、ある会社の被災した工場が復興したので取材に行った。私は最寄りの駅からタクシーに乗り、その工場に向かう途中で、運転手さんに震災当時の話をいろいろ聞いた。
その中で運転手さんは、靴の大切さを話し出した。運転手さんは、洋酒を中心に様々なデザインのお酒の瓶やグラスを集め、ベッドの回りの棚にずらりと並べ、それを眺めるのが趣味だった。ところが地震で、それらが床に落ちて割れて散乱し、素足なので怪我をしてしまうからベッドから降りることができなかった。
奥さんは別の部屋で寝ていて、いろいろなものが倒れて叫んでいたが、助けに行くことができない。地震がおさまると、奥さんがスリッパを投げてくれて、それを履いて、部屋から出られたそうである。
運転手さんは、「スリッパよりも靴ですね。傍に置いておくべきですよ」と言っていた。