人間性を保ちながら、都会で生きる
栄達を目指したラスティニャックも、実際に都会に進出したことで、想像以上の非人間性に驚き、田舎に帰ることさえ検討しました。
しかし、最終的に彼が下した決断は、パリを見下ろして、こう叫ぶことでした。
「今度はおれが相手だ!」
これは、社会に対するラスティニャックの宣戦布告です。
ゴリオ爺さんは社会の冷酷なルールに負けて命を落としましたが、反対に娘たちは、社会の冷酷なルールに従うことで成功を手にしています。
ラスティニャックは、都会に残って人間性を捨てるか、田舎に戻って人間性を回復するか、2つに1つの道を選ぶことを強いられます。
ところが、最終的に彼の口から出た言葉は、その2つのうちのどちらにもあてはまらないものでした。
ゴリオ爺さんの敵討ちのためにも、もう一度、自分は都会に戻る必要がある。
だけど、自分は決してあの娘たちのように人間性を捨てやしない。
人間性を保ちながら非人間的な都会で生きていく、第3の道を選んだのでした。