物語を歩くこと
かくしてわたしの人生初の聖地巡礼は終了しました。
結局、潤餅は食べられず、建物も囲われていて見えず、残ったのは檸檬餅ひとつ。けれど心は充ちています。
そうか。
自分の好きな世界が、この現実の中に本当にある。あの物語が、あの登場人物たちが、もしかしたら実在するかもしれない、という可能性は、こんなにも楽しいものなんですね。
もともと、とても近しい本でした。五人の物語は、どれもどこかしら自分の中に響くものがあります。人付き合いについ尻込みしてしまう勇気のなさ、弱いからこその強がり、外面と内面、世間と自分がずれているのではないかという戸惑い、なくしてから気づく大切なもの。その、わたしと物語の呼応が、あの空気と匂い、てくてく歩いた道の感覚、木陰の涼しさや、檸檬緑茶の甘酸っぱさを伴って、より鮮やかにわたしの中に立ち上がってくる。
一冊の本が、わたしにとって特別になる。それが聖地巡礼なんですね。
次回は楊さんの『台湾漫遊鉄道のふたり』を片手に、鉄道でぶらりと出かけてみるのもいいなぁ。




