長生きするようになると、別の課題が生じてきた

先に筋肉を使わなくてもいい世の中になったといいましたが、筋肉を酷使しなければいけない世の中のほうがいいのかといえば、もちろんそうではありません。

もし、食料事情が悪く、かつ重労働をみずからに強いなければ生き残れないという状況が50~60代になっても続いている激しい生存競争の世の中であれば、それはまたそれで問題があるものです。

端的な例を挙げれば、野生の世界における生存競争。それはまさに激しく非情であるのが当たり前であり、平均寿命の観点からいえば、だからこそとても短い。弱肉強食の世界では、筋肉が衰え始めた時点で、直ちに命が危なくなってきます。

それに対して社会をつくる生き物としてのヒトは、互いに助け合いながら環境を整えることによって、若くして死んでしまわないような方策を考えてきたと考えられます。

それによって、激しくからだを動かさなくても、三度の食事を安定的に口にすることができ、かつ毎日十分な睡眠がとれるという平穏な世の中になってきたのは間違いなく大きな進歩です。

そして、そのプラスの部分が結果的に平均寿命を延ばしてきたといえるでしょう。

ところが、長生きするようになってくると、また別の課題が生じてきました。すなわち、それまで生存に対する大きな脅威であった疾病や栄養失調などの課題が克服されると、今度は筋肉そのものの加齢変化という問題が顕在化してきたのです。

 

からだを動かす筋肉を衰えさせない(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)