少ない運動量で大きな効果を得る「スロトレ」開発者で、自らもボディビルダーとして活躍した元東大名誉教授の石井直方さん。2024年2月に逝去されてからも、「難しいことを簡単に」まとめられている著作からは多くの学びがあります。そこで、健康寿命を延ばすために重要な「筋力」や、シニアに適した筋トレ方法を解説した『シニアのための筋トレ学 「生活筋力」の土台をつくる方法』より、一部を抜粋して紹介します。
人は何歳まで生きられるのか?
加齢は避けて通ることのできない生物の宿命です。過去最高を更新したという日本人の平均寿命は、男性が約81歳で、女性が約87歳(2023年)であることはすでに述べた通りです。
一方、明治・大正、そして昭和の1940年代までの平均寿命は45歳前後。平均寿命が50歳を超えるようになったのは、第二次世界大戦以降であることがわかっています。
昔の人の平均寿命が短いのは、現代人に比べて生物学的にからだが弱かったからのように勘違いするかもしれませんが、実際はそうではありません。
昔は乳幼児の死亡率がきわめて高く、さらに若年であってもさまざまな疾病による死亡リスクが高かったため、全体としての生存年齢が押し下げられたことによります。
歴史を振り返ってみれば、江戸時代の人であっても90歳くらいまで長生きした人たちはもちろんいますし、徳川家康は73歳まで生きています。
どうしてこんなにも平均寿命が延びたのかといえば、現代ではとくに医療技術の進歩と、栄養面、衛生面での社会環境の改善によって、若くして亡くなってしまう人の数がぐんと減ってきたためと考えられます。