フランス料理シェフ・三國清三さんは、自らがオーナーシェフを務めていた東京・四ツ谷の人気店「オテル・ドゥ・ミクニ」を2022年末に閉店し、2025年9月、同じ場所にカウンター8席の店「三國」をオープンさせました。この「三國」について、三國さんは「グランメゾンを率いていたときにはできなかった夢を、この店で実現させたい」と語っています。今回は、そんな三國さんの著書『三國、燃え尽きるまで厨房に立つ』から一部を抜粋し、三國さんのこれまでの歩みをご紹介します。
「オテル・ドゥ・ミクニ」は次々と困難に見舞われてきた
経済が上向いてきたところでのリーマンショック、そこから立ち直りかけたときに起きた東日本大震災と、レストラン経営には厳しい時代が続いた。
店は37年間続いたわけだからいずれにしても切り抜けてきたのだし、結果がよかったならそれでいいじゃない、と僕は考えるタイプである。しかも、悪いことは、喉元過ぎるあたりからどんどん忘れてしまう。
だから、苦労話をするのはじつは苦手なのだ。が、こうして振り返っていると、自分でも驚くほど「オテル・ドゥ・ミクニ」は、次々と困難に見舞われてきたのである。
そこで、ひとつだけ、経営状態が厳しくなったときに僕がいつも心がけていることを、この場でお伝えしておきたい。