今の自分にできることは何か?

死ぬことができないと悟った私は「生きるしかない」と腹を括りました。まず考えたのは、前に向かって歩くこと、そして、何かをし続けることでした。

では今の自分にできることは何か? そう考えてすぐ浮かんだのは本を書くことでした。「そうだ! 本を書くことならできる」との思いで入院中から書いたのが、『ALSを生きる いつでも夢を追いかけていた』(東京書籍、2020年)でした。

当初はあと2冊は本を出したいと言っていたのですが、いつの間にか冊数が増え、2024年1月に出した『東京「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)が6冊目、さらに同年3月には続編として7冊目に当たる『大阪「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)を出しました。

ALSの難病と闘いながらこれだけの本を出すことは並みのことではないかもしれません。時には驚異の目で見られることもあります。でも私に言わせれば「他にやること・できることがなかった」からに他なりません。これまで数年間1日も欠かさず、原稿のことだけを考えて生きてきました。今日は何を書こう、どう書こうと思いを巡らしている時間は私にとっては至福の時でした。

確かに難病と闘う日々は苦しく辛い。でも、手足は動かすこともできず発声もできなくとも、心・精神は自由でした。

※本稿は、『ALS 苦しみの壁を超えて――利他の心で生かされ生かす』(明石書店)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
父の難病、兄の統合失調症、母の認知症…修羅場体験から学べると教えてくれたのは、地下通路の詩人だった
健康寿命と死亡年齢最頻値の差は<15年以上>も…「あのときやっておけば」と後悔しないお金の使い方をファイナンシャルプランナーが伝授
失明の危機は40代でも?些細な違和感を放置していると大変な事態に…専門医「私達は人類史上かつてないほど近くを見る<超近視時代>を生きている」

ALS 苦しみの壁を超えて――利他の心で生かされ生かす』(著:谷川彰英/明石書店)

2018年にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、苦悩と絶望に追い込まれながらも、できることは必ずあるとあきらめずに生きてきた6年間、難病当事者としての著者の想いはどのように変わったのか、そして多くの人との出会いにより何を見つけたのか。

極限の不自由さと引きかえに手にした利他の心に生かされる自分、そして同時に支えてくれる人たちや苦しみの只中にいる人たちを生かしている自分に気づくまでの軌跡を赤裸々に綴る。