厄年は61歳までしかない!?

「おまえも私の歳になりゃわかるよ!」

認知症の診察の場で、しばしば起きる親子ゲンカ。

その際に、親が発するこの啖呵が広く行き渡った決まり文句だと、私はずっと前から気づいていました。そして最近になってから、この言葉の真意がだんだんとわかってきたのです。

つまり「若く経験のない者が、老いをイメージしてもそれは絵空事。老いの現実は、老いを日々生きている当人にしかわからない」ということです。

そこでハッと気づいたのが、厄年は61歳までしかないことでした。

62歳以降こそ、毎年のように厄だらけだというのに、その肝心な時期に厄年がないのです。

仏教界の識者にたずねたところ、「生老病死」(仏教における、生きるうえで避けられない4つの「苦」)のうち、「生」「病」「死」については教本があっても、「老」には、これという教えがないのだとか。