老いの実感や心のあり方、死への覚悟
たとえば、あるとき學さんと、「老いをAIから学べるか」という話題になったことがありました。「老い」とは何かとAIにたずねたなら、次のように答えてくれるかもしれません。
「遺伝子の複製時にミスが増え、生存に不利な病的細胞を生じがちになる。その結果、身体機能が衰え、重篤な病気にかかりやすくなる死の前段階が『老い』である」と。
しかし、私が知りたいのはそんなことではありません。
当事者が抱く老いの実感や心のあり方、死への覚悟などを知りたいのです。
そんな問答を重ねているとき、學さんが、非常に印象深いことをおっしゃいました。それは、「老いを初めて実感したのは、それまでは平坦だと思っていた道が、実はゆるい上り坂だと気づいたときだった」というものです。
そのとおり!私自身、毎日のように歩き、平坦だと思っていた通りが、70歳を過ぎて初めて「ゆるやかな上り坂」だったと気づかされ、驚きとともに老いを実感したばかりだったのです。